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レミ16歳
その長い指が、ゆっくりと内側を滑る。
壊れ物を扱うように丁寧に、かけ過ぎるほどの時間をかけ、こちらの忍耐が限界に達するのを辛抱強く待つように。
「――痛いですか?」
痛いわけがない。いったいどれだけ弄っていると思ってるんだ。
「気持ちいいですか? お辛くないですか?」
答えないでいると質問を畳みかける。
わかってる。こいつは俺の口から言わせたいんだ。
黙っていると、指先が敏感な部分を刺激した。
「ん、あっ」
身体が跳ね上がり、思わず声が漏れる。
「感じました?」
まるで医者の診察のような冷静な声。だけど冷静なのは声だけで、指先は執拗に敏感な場所を攻める。
「やっ、ダメ、もう……ジェイド、いい加減に」
「欲しいですか? 欲しいならば欲しいと」
指の動きを止めないまま、ジェイドが耳元に囁く。そのくちびるが、撫でるように首筋を伝う。
この王宮に連れてこられたときから、ジェイドは俺の世話役だった。
当時十三だった俺の五つ年上。十八にしてはやたらと老成した奴だと思った。
暗めの金髪に、冷めたブルーの瞳。無口で、余計なことはほとんど喋らない。この王家に代々仕える騎士身分の家の出だった。
こんな関係が始まったのは一年前、俺が十五のとき。
オイルで滑ったもう片方の手が、固くなりはじめた俺の前側をやんわりと握る。
ジェイドは決して乱暴な真似をしない。まるで親鳥が幼い雛を慈しむように、優しく、丁寧に指を滑らす。
「……あっ、あっ、……もっ、ジェイド」
名前を呼んだ瞬間、手の動きを止める。イキそうだったのに寸止めされ、鬱憤ばかりが募っていく。
「……どうして欲しいか仰ってください」
――どうして欲しいかだって?
撫でるようなやり方じゃなく、もっと強く触って欲しい。優しさなんか捨てて、乱暴に抱いて欲しい。すべてを忘れるくらい、情熱的で激しいキスを――
だけど言わない。こんなのは間違ってる。こいつは俺の運命の人じゃないから。
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