王国を繋ぐ者

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「……僕はただ、たとえば、の話を」 「じゃあ俺がいいと言ったら、女と結婚するの? どうする、ってどういうつもりで聞いたわけ? つまり、俺の許可が欲しかったんだろ?」  これまで一度だって聞いたことのない、追い詰めるような冷たい声。焦りと混乱で、上手い言い訳さえ出てこない。 「違うよ……そ、そうじゃなくて、……えっと、あの」  独占欲の塊のようなユリウスがそんなこと許すわけがないって、最初からわかってたじゃないか! 聞いてどうするつもりだったんだよ、僕の馬鹿!  突然、ユリウスが腰からベルトを引き抜いた。それをなぜか僕の左の手首に巻きつける。 「えっ……何してるの」  訳がわからずぽかんとしていると、身体ごと抱え上げられ、ベッドの上に投げ落とされた。ユリウスはそのベルトのもう片方の端を、寝台の支柱に結びつけている。 「ユリウス……! 何これ、外して!」  腕が一本しかないのだ。自分では外すことができない。そうするうちにもユリウスはもう一本ベルトを取り出し、僕の右足首に結びつけた。 「嫌だ! 何でこんなこと……! ユリウス、話を聞いて!」 「聞かない」  あっという間に寝台に(はりつけ)にされ、抵抗ができない。自分の無力さに、愚かさに、悔しくて涙が滲む。  ユリウスが僕の上に跨り、表情のない顔を近づける。 「ルイ、女を抱く自分を想像した?」 「えっ……してないよ! 何でそんなこと――」 「ちゃんと想像しろよ。服を脱がせて、くちづけをして、触り合って、お前がその女の中に挿れる。相手に欲情して、お前がその中でイカなきゃ子どもはできない」  生々しい言葉を聞きながら、心が想像を拒否した。 「夫婦になるっていうのは、そういうことだよ、ルイ」  ユリウスは寝台から飛び降り、戸棚の奥からガラスの小瓶を取り出した。その蓋を開け、ふたたび僕の上に跨る。 「飲んで」  頭を持ち上げられ、小瓶の縁を口に当てられる。抵抗し、必死でくちびるを噛み締めた。この瓶には見覚えがある。――媚薬だ。  頑として口を開けない僕を見て、ユリウスが代わりにそれを口に含んだ。ユリウスの指が、無理やり僕のくちびるをこじ開ける。 「……嫌だ、こんなの。……お願い、やめ――」  懇願も届かず、くちびるを塞がれた。
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