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ベッドに腰掛けた僕の太腿に果林ちゃんが頭を乗せる。僕の膝の上のギターの弦を弾く。
耐えろよ、と僕は僕に言いきかせる。
果林ちゃんと、したい。
果林ちゃんとセックスしたい。
すごく、したい。
だけど、果林ちゃんと、もっと他にしたいことがあるんだ。
ラップトップかタブレットが一台あれば何でも出来ちゃうはずだけど。
果林ちゃんはこういうおもちゃみたいな楽器を組み合わせるのが上手い。
初めて果林ちゃんを見たとき。
それは三神くん家の人口密度の高いパーティーで、果林ちゃんはメトロノームとトイピアノを使って、ひとりで『銀座カンカン娘』を歌った。
高速でしょっぼい『銀座カンカン娘』は、僕の地元の地区会対抗カラオケ大会で聴いたものと同じ曲とは、とても思えなかった。
メトロノームの針の噛みつくような勢いと果林ちゃんのつぶやく声。甘い声。叩きつける雨みたいなトイピアノの高音。
それはもう、どんなパンクよりもパンクで、かっこよかった。
果林ちゃんがギター弾けないっていうから、一緒に練習してライブやろうよって言ったんだ。
僕は果林ちゃんと組むんだって決めた。
ドラムはいらないからリズムマシン使って、僕とやろうよって。
女の子としての果林ちゃんの魅力を、花咲かせるのは、僕じゃないのかも。
でもさ、好きなように尖っていきなよ。
男なんて、踏んで進んじゃいなよ。
僕のものにするんじゃなくて、僕の果林ちゃんの、かっこよさを見せつけたい。みんなに。
果林ちゃんが僕の太腿に鼻を寄せて、また言う。
「しーちゃん。良い匂い。何か使ってるの?香水的な」
ラクダ、食べたい
ラクダ、嗅ぎたい、だと変かなあ、なんて呟く。
抱かれる側になるために、甘い匂いをまとうようになった。すっかり習慣になってた。
僕、童顔で身体も小さいけど、さすがに女の子に間違われることはない。
受けらしくっていうか、ネコらしくっていうか。
セックスの時、相手のためっていうよりは自分を盛り上げるために匂いをつけてた。
僕は、洗面所のその場所を果林ちゃんに教えた。
だってさ。
今、僕、立ち上がれないもん。ほんと。
下半身の我慢大会みたい。
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