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歯切れの悪い言葉をかき集めた結果、僕に分かったのは、昨日、果林ちゃんは炎天下の国道脇を歩いて大学まで戻ってきたということだ。
「古着屋さんに連れてってくれたところまでは良かったの」
アイスホッケー部の四年生、だそうだ。
その男は果林ちゃんをドライブに誘って、お買い物に誘って、それからラブホに誘った。国道沿いの。
「夕方だったから、さすがに段々暗くなって来ちゃって、怖かったなあ」
ぐりぐりと、果林ちゃんは短い柔らかい髪を僕の肩に押しつける。
あー、しーちゃん良い匂いする、などと言いながら。
果林ちゃんは不器用だ。距離が近すぎたり遠すぎたりする。
なんで、助けてって連絡して来なかったんだろう。
なんでもひとりで処理しようとするから。
「足が痛くなっちゃって。でも、夕陽に向かって歩くみたいできれいだったよ」
泣きもしない。強がりだ。
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