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僕はベースをスタンドに置いて、ベッドに腰掛けた。
Aラインのワンピースを着て、黒いタイツの脚をさらけ出して僕のベッドに寝そべってる果林ちゃんには、誘ってる自覚なんてまるでない。
「そんなだから」
僕の声に果林ちゃんは顔を上げた。うつ伏せの身体を起こした。
僕より短い髪。
白い首すじ。細い腰。
胸はあんまりない。
果林ちゃんのことならきっと抱ける。
普通の女の子は無理でも、果林ちゃんなら。
むしろ、したい。一回、やりたい。
僕の下で果林ちゃんがどんなふうに泣いたり甘えたりするのか、見てみたい。
好きだ、付き合ってって言われたら果林ちゃんは付き合うんだろうか、そいつと。
誰でもいいの?
僕の体重でベッドが軋んだ。
背は同じくらいだけどさ、力は僕の方があるんだよ。
僕は果林ちゃんの女友達じゃない。
今、押し倒す必要すらない体勢なんだから。
今、僕が、そのむき出しのうなじに唇をつけたら。
もしも、そうしたら?
「ね。しーちゃん、これ言ってみて」
果林ちゃんが絶妙なタイミングで僕の鼻先にタブレットを突き出した。
やば。
果林ちゃん。なに? その顔。
かわい過ぎ。
そんな無防備に笑いかけるから。
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