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 そして、翌日。  ソワソワとする私に対して、いつもどおりの田所さんが、定時にスッと立ち上がり 「お疲れ様でした。湊さんと食事に行ってきます。」 と会釈する。 「お疲れ様でした。いってらっしゃい。」 笑顔で手を振ると、田所さんがまた会釈して歩き出す。すると、たまたま近くにいた部長が 「湊と食事?」 と首を傾げた。  田所さんがコクリと頷き、会釈して歩き出す。 「なんで?」 また部長が首を傾げ、田所さんが部長を見る。 「人付き合いの勉強です。」 「えっ!」 部長が固まり、その後ガシッと田所さんの両肩を掴む。 「田所!すごいじゃないか!」 「いえ、まだ成果はでていません。」 「いやいやいやいや。勉強しようと思っただけで大進歩!しかもトップ営業の湊に教えを乞うとは、かなり本気だな!」  田所さんが困り顔で私を見る。教えを乞うわけではなく、湊さんとの交流でスキルを身に着けようとしているのだということを、説明したほうがいいかどうか迷っているのが分かる。私はしばし考える。
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