僕だけが出来ること

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僕だけが出来ること

「はい、貼るよー」 「……うひぃ! 冷た!」  僕の彼氏は、昔から肩こりや腰痛に悩まされている。  そんな彼氏に対して、僕にしか出来ないことがある。それは、お風呂上がりの彼の背中や腰に、湿布を貼ってあげること。 「一回、整体の先生に見てもらえば?」 「えー、ヤダ」 「なんで?」 「お前意外に身体触られるのが嫌」  彼氏が、そんな嬉しいことを言うものだから、僕は少し調子に乗る。 「いっぱい貼ったから、今日はいちゃいちゃ出来ないね?」 「……な」 「大人しく寝ていないと、はがれちゃうもんね」 「……」  気が付けば僕はベッドの上。  押し倒されたんだー、ってぼんやりと思った。 「……キスだけなら、はがれない」 「キスだけで良いの?」 「……今日は良い。でも……明日は、もうちょっと遅い時間に貼って下さい」 「ふふ、了解」  降り注ぐキスの雨を、僕は目を閉じて受け入れる。  湿布を貼るのも、いちゃいちゃするのも、全部僕だけが出来ることでありますように。  ずっと、永遠に――。
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