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あるはずのカフェが見つからずに、空腹と苛立ちを感じながら住宅街を彷徨っていた。こういう時に限って携帯電話の充電不足のせいで、地図アプリが直ぐに落ちてしまう。
「隠れ家的カフェ! 隠れすぎよ!」
千歌は周りに人が居ないのをいいことに心の底から叫んだ。
「だめだ。迷った。一度駅前の交番に戻って……お腹すいて目眩がする」
ゆらりと来た道を戻りかけて、鮮やかな青い屋根の建物とカフェの文字が目に飛び込んできた。敷き詰められた煉瓦タイルを進むと、不思議と気持ちが高揚していく。カフェの名前を確認しようとしたが、蔦で隠れてしまっていた。
「このカフェで合っているかしら……でも、違っててもいいや」
携帯電話は完全にバッテリーが切れてしまった。これ以上歩き回ると駅にすら戻れない気がした。
「よし」
カフェの扉を開けると、正面の壁にカフェの名前が見えた。
チリンチリンチリン。
「やった! お客様……もしかして迷子?」
食事中の女性が笑顔で首を傾げた。女性は金茶の髪を後ろで束ね、白のエプロンを付けている。
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