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「あ、あの。実はその両方で、やっとこちらのカフェに辿り着いたと言いますか……カフェの名前はメイコじゃなくて、迷子なんですか?」
「はい。カフェ迷子。道に迷った人が助けを呼んだ時にオープンするカフェなんです。私はここのシェフです」
「……確かにカフェを探して彷徨ってましたけど、助けを呼んだ覚えは……」
お腹が激しく鳴った。シェフはそれを聞いてにっこり笑う。
「確かにそうかも」
シェフのジョークに思わず口元がゆるむ。
「どうぞ、お好きな席へどうぞ」
窓際の二人席が四セット、四人がけの席が三席とずいぶんこじんまりとしたカフェだ。おまけに客が千歌だけだった。
「少々、お待ちくださいませ」
シェフが緑色の何かが乗った皿をキッチンへ運ぶ際に、ふんわりと焼けたお肉の匂いがした。緑色はソースの色なのだろうか。
窓際の席に座ると、シェフがグラスに入った水を持って来た。
「他に店員さんはいないのですか?」
「ええ。この通り暇なので私一人で何とかなります」
「はあ」
シェフが趣味で開いている店なのだろうか。
「あ、あの。ランチメニューはありますか?」
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