迷子とランチを

2/20
前へ
/20ページ
次へ
「あ、あの。実はその両方で、やっとこちらのカフェに辿り着いたと言いますか……カフェの名前はメイコじゃなくて、迷子なんですか?」 「はい。カフェ迷子。道に迷った人が助けを呼んだ時にオープンするカフェなんです。私はここのシェフです」 「……確かにカフェを探して彷徨ってましたけど、助けを呼んだ覚えは……」  お腹が激しく鳴った。シェフはそれを聞いてにっこり笑う。 「確かにそうかも」   シェフのジョークに思わず口元がゆるむ。 「どうぞ、お好きな席へどうぞ」  窓際の二人席が四セット、四人がけの席が三席とずいぶんこじんまりとしたカフェだ。おまけに客が千歌だけだった。 「少々、お待ちくださいませ」  シェフが緑色の何かが乗った皿をキッチンへ運ぶ際に、ふんわりと焼けたお肉の匂いがした。緑色はソースの色なのだろうか。  窓際の席に座ると、シェフがグラスに入った水を持って来た。 「他に店員さんはいないのですか?」 「ええ。この通り暇なので私一人で何とかなります」 「はあ」  シェフが趣味で開いている店なのだろうか。 「あ、あの。ランチメニューはありますか?」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加