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「すみません。決まった時間にお客様がいらっしゃるわけではないのでランチメニューはないんです。その代わり、この店では今朝採れた新鮮な食材で作った料理を無料で提供しています」
「え、無料って、タダ?」
「はい。その通りです」
「……」
後で法外な請求をされる気がして怖くなる。
「ご心配されているような事は何もありません。お客様に料理を沢山召し上がって頂けないと私もここから出られないんですよ」
「えっ? どういう事ですか?」
「外をご覧になってください」
窓に視線を移すと、住宅街は消え巨大な木々が見えた。
「えっ! 何? どういうこと」
巨大な木々の間から、沼のようなものも見える。その沼の周りに何やら動物が集まっていた。
「ここ、どこなんです」
「あなた達からしてみれば、ファンタジーの世界ってやつですね」
シェフは何故か照れ臭そうに笑った。
「ファンタジー?」
「ドラゴンや妖精がいて、魔法がある。そんな世界です。あなた達が私達の世界を知ろうとしているのと同様に、私達も色々勉強しているんですよ。例えばほら、この調味料。とってもクセになる美味しさで……」
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