極楽蝶の送り人

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「ありがとうございました」  納骨式を終え、会食として俺と一条はファミレスに食事に来ている。  本当はちゃんとした店にしたかったが、清水へのお布施──彼は「いらない」と言ったが、払わないと気が済まなかった──もあり、これくらいの価格でしか食事ができなかった。 「当然のことをしただけだよ。だから私に施主(せしゅ)として奢らなくても」 「いえ、今日の費用だって給料を前借りさせていただいたおかげですし……少しでもお礼がしたくて」 「じゃあ、遠慮なく」  そう言いつつ、一条は一番安いものを頼んだ。 「で、御影君はこれからどうしたい?」 「一条さんがよろしければ、このまま働かせてください。極楽蝶の声を聞いて、俺にしかできないことがあるのなら……俺はそれをやりたい」 「私も御影君がいてくれると、心強いよ。これからもよろしくね」 「はい!」  料理を食べていると、窓ガラスをすり抜けて一匹の極楽蝶が俺の頭に留まった。 「……御影君? 蝶に話しかけでもした?」 「いや、何もしてないです!」 「じゃあ、君は好かれやすいのかもしれないね」 「……えぇ」 「はは。食べ終わったら、教えてくれ……その蝶の願いを」    ──茉莉、お兄ちゃんは頑張ってみるよ。茉莉と同じように、この世から飛び立てずにいる極楽蝶を送り出す仕事を。                              (終)
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