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倶
素朴な布が風にひるがえり、戦争反対の旗を持った老人も若人もゆれる。
花もゆれる。
空の上では高度によって、雲が違う方向へ流れてく。
どこへ行けばそこは安寧なのか知っている鳥たちが飛んでゆく。
ヤタガラスもそのあとを追い、帰ってきて、ヒトの道しるべとして先へゆく。
神の加護を得たカラスが。
国民として、現代社会がどうあれ花月はこの国が好きだ。
日本。
この国は神の血統を重んじる単一家族国家だ。
いろんな経験積んで本を読んで学んだ結果、花月はそんな結論に達している。
高校二年生の現時点で、まず。
ホクサイにも伝えた。
「尊いな。でもそれならもっと、胸はって生きなきゃ」
「うん。下向いて歩いてる同年代見ると、そう思う。私も」
「でもそれが難しいんだよな」
「それも、うん」
花月にはもどかしい気持ちがある。
意識高いとかなんとか褒めるくせに遠巻きに見て、気にしてるのはみんなの輪からはずれない程度の横並び個性のインスタ映え。
SNSには呪詛だらけ。
豊かに破綻しかけてるこの国はどうしたら癒やせるのかわからない。
だからこうして学校に来たり、本を読んだり、ヒトと交わって進化したい。
もちろんAIとも。
花月の口角があがるのを、ホクサイは見た。
「どした? 思いだし笑い? すけべ」
「機械に欲情するほど、進化、してないつもりなんだけどな私」
「そう言っちゃうのがそれだよ」
ホクサイの笑顔。
美しい。
やわらかい。
どっか神さまの物語から抜け出て来たみたい。
人工の美。
そう云えば、と、ジュースもうひと口のあとに、花月が口をひらいた。
ヒトが作った命が人工知能なら、私達、ヒトは、神工知能だと胸はって良いんじゃないのかな? と。
ユニークな発想だね、と、ホクサイは続きをうながした。
命を作って頭脳を作って、できた似姿それに崇められ、アイデンティティの確立を見た神さま。
そんな神の似姿として生きる我々は、存在するだけで神の存在を証明しているのかもしれないじゃないか。
似姿、なら、ほら、お手本にのっとった形。
まさに神のコピ。
神工知能だから。
対立しつつも併走する科学と宗教は、互いをほめあって高めあっている。
それらをわきまえた上で、人工知能を語るなら、ヒトは限りなく神に近い。
自分の似姿を作ろうと思いたち実行している。
それは親を手本に育つ子供みたいなものではなかろうか?
人と云う神が作ったコピ。
人工知能。
作り、生き、くりかえす永遠の宇宙の連鎖。
「宿業の一端かな、て、私は考えておるわけですよ」
「そか。良い語りだったよ、良すぎて眠いよ」
「退屈だったかしらね、ぼっちゃん」
「まさか!」
笑い声を風が運ぶ。
プラスの感情を希釈しめぐらせ、世界を心地よくする。
魂。
水。
命が始まって終わってを、地球みたいな奇蹟を、どこかしこかで作り続ける宇宙。
すべてはなるがまま。
なんとかなる。
細工をりゅうりゅうしたら、あとはしあげをごろうじる。
だけで良い。
だけ、つーても、力をふりしぼってこそ、追いついてくる良い結果。
因果応報とか有言実行とか良いような悪いようなそんな言葉になるモノ。
言葉も名前もすばらしい。
有る。
無い。
それを魂どうし伝えあい共鳴している。
今日も地球は鳴っている。
太陽の周りを回りながら、さらに自分でも回りながら、宇宙のどこかを流れゆく。
命の船として。
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