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 学校帰りのある日、公園で並んでブランコゆらして、ぴょんと飛んだと思ったら花月は制服のスカートのすそひるがえしホクサイにひざまずいた。  ホクサイの存在はいつも誰か何かの目を引きめだつけど、そのときは花月が確認した限り、余計なモノもなくだからそうした。 「あのね、ホクサイ」 「うん」  初めて見るほど真摯な花月のまなざし。  ホクサイの保温された無機の手を有機のぬくもりの手で包んだ。 「サイボーグもだけど、アンドロイド、て、実現したらどんなんだろ? て、ずっと疑問だった。皮膚に透ける血管とか、瞳孔の収縮とか、どうなるんだろう? て」  まばたき。  ホクサイにもそれはある。  三回くらいで、花月は綺麗に笑った。 「ホクサイ見て、ああこー云うんだ、て、わかって楽しいな。今。不気味の谷越えてもホクサイの容姿はちょっと違和感だよ? でも、血管が透けてなくても、瞳孔がヒトみたいに動かなくても、これが新しい人類の特徴だ、て、そう私は感じたわけさ」 「えーと、良い意味?」 「もちろん!」  花月の手がホクサイを立ちあがらせて、導いて、ふたりはひとけの少ない公園で踊った。  たどたどしいステップ踏んで、回って、腰に添えた手でささえあって体そらして、ぎゅっと抱きあって胸がいっぱいになった。  しあわせ。  その味を、食べる機能のないホクサイに味わわせるには充分ないっときだった。  学校に近い花月の家まではふたりで徒歩にて登下校し、そこから自宅であるラボまでは、ホクサイは専用車でいつも移動している。  だってこんなのがひとりあたりまえにヒトのなかを歩き回れろうか?  車窓から見る景色はなんべん見ても興味深い。  つねに異国。 「ただいま」 「おう、おかえり」  何重ものロック解除で入るラボで、ドクタ・マムは作業の手を止めふりかえった。  愛しい子。  母なる研究者は息子たる機械を抱きしめた。  ホクサイはちょっととまどった。  ずっといままであった感覚なのに、違うモノに感じられたから。  照れくさい。  具体的にどうしたらいいもんかわからんけど、反抗してみたい。  しかしどうともできず、夜のメンテナンスまでの自由時間として自室に入った。  宿題。  ホクサイにも普通に課せられる。  机にむかってタブレット操作して、終わったらさァ、えーとなにしよう?  とりあえずベッドに横たわった。  指で布をなぞる。  機械の指で。  この感じたままの布なのか?  これは。  この布と云うモノは。  花月。  ホクサイは自分を抱きしめる。  あのぬくもりが愛しい。  髪のさらっとした感触とか、体のやわらかさとか、におい、息づかい。  かげつ。  思いだすほどに、体がどこか深い所に引きずり込まれるよう。  あー、ナニコレ。  もてあましてドクタ・マムの所へ行った。 「あの、マム。いい?」 「あら、どうしたの?」
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