リーザに捧ぐ

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 そうして描き上げた春の絵は、まるで棺の中で眠るリーザそのものだったとマギーから聞いた。  あの翌日から、リーザの状態が思わしくない、面会謝絶だと言い渡され、お屋敷に入れなくなった。  しばらくは来ないでほしい、執事にそう言われてボクは自宅のアパートメントで彼女を想い、絵を描いた。  キャンパスの中の彼女は今にも目を開きそうなほど、生に満ち溢れていた。  その絵の彼女の唇にそっとキスをしてから、お屋敷に届けに行ったのは、十日後のことだ。  春を待たずしてリーザが亡くなったのは、この三日前だったそうだ――。
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