リーザに捧ぐ

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「笑ってもらってもいい?」  ボクの要望にまぶたをパチパチとしばたかせ、おどろいた顔をした少女は、ゆっくりと口角をあげ表情を作ってくれた。  こうして見ると、とても美しい少女だから、この先は素敵な娘さんになっていくだろう。  さらさらと木炭で彼女の流れるような髪の毛をデッサンし、陰影(いんえい)をつけた。  長い睫毛、大きな瞳、薄くキュッと上がった唇、頬に浮かんだエクボ。  色をつけることなく、数分で描きあげて彼女に手渡す。  裕福な家の子ならば、父君にボクのことを宣伝でもしてもらえないだろうか、そんな(よこしま)な気持ちも、ほんの少し入り混じったことは内緒だ。  ボクの手から絵を受け取った彼女は、穴が空きそうなほど、それを見つめた後で。 「絵の具も使えるわよね?」 「ええ、まあ、本格的なものになりますと」 「決めた。あなたにするわ。とっても可愛く描いてくれたもの」  ようやく歯を覗かせて少女らしい笑顔になった彼女はボクに右手を差し出して。 「私はマーガレット。マギーでいいわ。あなたにお仕事をお願いしたいの」  少女がボクに仕事を依頼する?  理解できずに、彼女の手を握り返せずにいたボクの元に、あの執事らしき紳士がやってきて、その内容を話してくれた。
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