リーザに捧ぐ

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「ねえ、申し訳ないけど、こちらにいらして? そこにある椅子を持ってきて側にきてくれない? 婆やは、お茶の用意を。お客様に美味しいお菓子もお願いね」  彼女の声に導かれるまま、召使いは一礼すると、ドアを閉めて出ていく。  ボクもまた一人掛けの刺繍の施された高級そうな椅子を抱えて彼女の側に持って行き、腰かけた。  近くで見るマギーの姉であるエリザベート。  マギーとよく似た美しい顔立ちの女性だった。  ベッドに置かれたクッションを背にして、彼女はニッコリとボクに向かって微笑んだ。  やはり、天使のようだ、と思ってしまった。  マギーが大人になれば、こんな美しい女性になるのではないか。  ただ活発そうなマギーに比べ、今ボクの目の前で微笑んだエリザベートは窓からの陽の光にも溶けてしまいそうなほど、(はかな)い線をしている。 「ごめんなさい、今日は起き上がることができなくて」  時折、コンコンと乾いた咳をし、両手で口元を覆う。 「窓を開けて下さる? 空気が悪いでしょう?」  それは、きっと自分の咳のせいでボクに迷惑がかかると思っているように聞こえて。 「大丈夫ですよ。今日は初夏にしては、少し気温が低いので窓は開けない方がいいです」 「ありがとう、えっと。そういえば、まだ、あなたのお名前を」 「ボクはジョゼフ。マギーに雇われ、ミス・エリザベートの肖像画を描きにやってきた駆け出しの売れない画家です」  深々とお辞儀をすると、ミス・エリザベートは首を振って、それを制す。
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