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夏本番を前に出来上がった絵画には、彼女が白い歯をこぼし、幸せそうに波打ち際で戯れている様子を描いた。
「まあ、素敵! なんて楽しそうなの! ああ、ジョゼフ、あなたは最高の画家だと思うわ。私ってば、こんなに血色もよくて何より小麦色の肌がとても元気そうなんだもの」
絵と同じような生き生きとした笑みを浮かべたリーザは、その絵とは相反するように、また少し細くなり、肌の色も白みを増した。
ボクはあれから毎日のように、昼前には彼女の元を訪れて、夕刻までを共に過ごし、時々一緒に夕飯をとっている。
自分の風邪がうつるのでは、と何度も心配してくれた彼女に、心配ないよとボクは笑って見せた。
「貧乏人というのは、病気をしないように体がつくられているらしい。きっと病気でお金がかからないように、と神様が与えてくれたのかも。だからホラ、ボクはいつだって元気だろ?」
少し自虐めいたボクの冗談にリーザは目を細めて笑う。
「だったら私も今度は、貧乏人に生まれ変わるわ、そうして元気に跳ね回ってジョゼフと野原を駆け回ってみたい」
生まれ変わる、その言葉の意味が痛いほどわかる。
時には、ベッドに起き上がることもできずにいるリーザは横になったままでも、ボクがキャンパスに絵を描くのを微笑んで見守ってくれた。
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