第一話 吸血鬼の目覚め。

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第一話 吸血鬼の目覚め。

 口内に広がる恵みのネクター、馥郁たる香りを嗅ぎながら、我は静かに目覚めた。 「これは……? 我は今まで何をしていたのか……」  恵みの元は、うら若き乙女であった。ぐったりと寝台に身を横たえる彼女の首筋から、汚れなき命の水が我の体に流れ込む。それは生命の輝き。千の雷光が天空の雲を光らせるように、我の意識は目も眩むほどの閃光に包まれる。 「――ああ! 満たされていく……。これこそが我が運命。すべての命は我の前に跪くのだ!」  満たされた我は乙女の首筋を離れ、漆黒の闇へと飛び立つ。 「人間どもよ。下等なる生き物たちよ。断罪の時は来た! 真なる支配者の前で震えるが良い! 我こそすべてを始め、すべてを終わらせるものなり。吸血鬼始祖(ヴァンパイアマスター)は今目覚めた!」 ――我は生贄を求めて広がる世界へと飛び立っていった。
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