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かわいくないアタシ
「佐藤さんは……何でスカートの下へズボンをはいているの?」
朝倉くんがそう訊ねてきたのは、放課後に校内を案内している時だった。
「え?」
人気のない階段の踊り場にアタシの間抜けな声が響く。
全く予想していなかったその問いかけにフリーズしながらも、目だけを動かして壁に設置された姿見を見る。
この中学のセーラー服は、冬服夏服共にシンプルなデザインではあるが"かわいい"というのが定評だ。アタシもご多分に洩れずそう思う──だから嫌。
「アタシ、スカート嫌いなんだよね」
そう答えると、鏡越しに見る朝倉くんは朝のHRの時と同じで目を大きく見開いて固まっている。そんな彼に構わず続ける。
「アタシの名前ね、昌っていうの。名前も外見も男っぽいでしょ? その上性格も男っぽいからスカートに抵抗があるの」
生まれついて茶色の髪は伸ばすと天然パーマで収拾がつかなくなるので常にショート。色黒でそばかすが多く、身長だって男子よりも高い。声は低くくて、電話ではよく兄達に間違えられる。
「スカートって慣れてないから恥ずかしくて、体操服の長ズボンを下に穿いて誤魔化してるの。中学も小学校と同じ私服登校だったらよかったのに」
自虐的に笑うと、朝倉くんは眉を寄せて険しい顔をする。
そして──
「それなら僕にその制服ちょうだいよ!」
悲痛な叫びを上げた。
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