朝倉くんの秘密

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朝倉くんの秘密

 朝倉くんの言葉に呆然としていると、彼の顔がどんどんと青くなっていく。 「えっと、その、僕……、」  オロオロとして、両目いっぱいに涙を溜める朝倉くんをみていると何だか可哀想になってきた。 「こっち」  堪らなくなって彼の手を握り、ここから一番近い家庭科室へと入る。幸いうちの中学にはここを使用する部活はないので誰もいない。  丸椅子に朝倉くんを座らせて、アタシもその隣に座る。すると彼はポツリポツリとゆっくりと語り始める。 「神様が、僕の性別を間違えたんだ」  それからの彼の話をまとめるとこうだった。  朝倉くんは所謂"性同一性障害"というもので、本来生まれもった体の性と心の性が一致してないのだと言う。  こんな中途半端な時期に転校してきたのも、前の中学で「オカマちゃん」というあだ名をつけられていじめられたかららしい。体と心のバンラスがとれていない事を隠してはいたのだが、どうしても態度に出てしまうのだそうだ。 「父さんは僕に男らしくしろって言うんだけど、無理だよ。だって僕は学ランよりセーラー服が着たい。そもそも"男らしく"とか"女らしく"ってなに? "自分らしく"じゃ駄目なの?」  この様子では両親に自分の状態を話せていない様だが……。 「なんで、アタシに話してくれたの?」  そう問うと、彼は泣き出しそうな顔で笑う。 「佐藤さんなら分かってくれると思って」
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