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美貌の転校生
「転校生を紹介するぞー」
朝のHR、担任の山本先生は教室に入ってくるなりそう言った。
中学1年生の5月という中途半端な時期に何故? と思ったが、その言葉通り先生の後ろへ続く人影があって──。
「朝倉 遥です。どうぞよろしくお願いします」
愛嬌のある声でそう自己紹介したのは、絹糸の様な黒髪をボブカットにした、色白で華奢な……学ランを着た男子だった。
"美少年"とはまさに彼の為に作られた言葉だと錯覚させられながら朝倉 遥を見つめていると、不意に先生が言った。
「席は佐藤の隣だ。ほら、あそこ」
このクラスに佐藤はアタシだけで、昨日までは何もなかった隣の空間に登校すると机と椅子の一式が出現していたので不思議には思っていたが……そういうワケか。
朝倉 遥は先生の指の先を追ってアタシの方へと視線を寄越す。一瞬目が合った様な気がしてドキリとしたが……まぁ勘違いだろう。
静々と隣までやって来た朝倉 遥は、ペコリと丁寧に頭を下げる。
「よろしく、佐藤さん」
声変わりもまだしていないかわいらしい声で言われて、思わず座ったままだが朝倉 遥へと体を向ける。
「分からないことがあったら何でも聞いてね、朝倉くん」
すると彼はハッと目を見張って立ち尽くす。しかもジィーと食い入る様に見つめられ、どうすればいいのか分からない。
「早く座れ~」
先生の声がして、朝倉くんは顔を逸らすと黙って席についた。
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