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昨晩のあの男がクラスメイトだとは思わなかった。
泥川に浸る。体の免疫が泥川の汚さに気を取られて人間の部分と魚の部分の繋ぎ目で喧嘩するのをやめる。姉のように清い海で泳げたら。その憧れを解消することができたから。鯉に狙いを定めて捕まえる。
痩せた鯉だった。それでもキラキラ光る尾鰭で羨ましいなと思いながら食べていた。
河原の砂利が踏まれる音がして振り向いた。
私の食べ残しを狙った野良猫だと思い分けてやろうと思ったからだ。人間の男がいた。私は川に飛び込んだ。
夢だと願ってくれお願いだ。
人間に戻ると魚の部分と人間の部分が平等に混ざる。そして争い合って体がボロボロになる。
人魚と人の交わり、まあ、人魚姫のハッピーエンド版の先の先にあるバットエンドの固まりみたいな体だ。
人魚と人間の遺伝子が体の中で常に喧嘩している。不老長寿の伝説は私の体には無い。たまに生まれて20年以内に死ぬ。それが避けられない運命だ。
インターホンがなる。いつもの学校からの書類だろう。そう思って玄関側の映像見る。
昨日の男だ、なぜいる。学校の制服?クラスメイトだったのか。しかも昨日のことを覚えている。知りませんにが通るようなやつであることを願ってインターホンを切る。
それでも封筒を置いていかなかったかったから、母に頼んだ。母が池の鯉を死なせてまで作ったわたし専用の薬がいっぱい入ったもく浴場に浸っていたとき、さっきの男が現れた。
うるさいと私は言った。なのに話しかけてきたから答えた。
「泥川でなら、話したげる」
そういうと男は素直に去ってくれた。それから時々、男と泥川で話すようになった。痩せた鯉をつまみに話をする様になった。学校にあまり行けない私にとって男の話は新鮮でだからこそ残酷なものだった。
男の家は貧乏だった。ある日起きた学校内の盗難事件で免罪をかけられたのだ。時間が経って真犯人が2度目の事件を起こして免罪は晴れたのだけれど、以来学校で浮いていること。それが嫌になって夜中、泥川で黄昏ていたときに私を見た。私も男も人と話せるのは楽しいかった。しかし、私の体は弱っていった。
泥川に行けるのは後どのくらいだろう。今日、泥川に行く時に鱗を渡そう。家の池に浮かべた造花の蓮で遊びなながらそう考えていた。
夕方、泥川の上流で大雨が降り、川には近づかない方がいいとその日の夜のニュースで見た。
慌てて泥川まで走る。久しぶりに人の姿になり、体が痛い。でも急がないと男が待っている。走って泥川の堤防を越えて下を見た。男の背が見える。
「泥川からはなれて!」
私が叫んだと同じだった。川の近くにいた男は濁流に飲まれる。一瞬だった。私は男の背を追いかけて川に飛び込む。
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