肉食ナース、佐脇響の場合 ④

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ふふふと悪い顔をしていると、 「あ、でもまだご主人お部屋で待っているんじゃないですか」 とオジョウサマの気遣いが。 「大丈夫。今日はもうディナー食べたら帰ったから。早速メニューの研究するんじゃないかしら」 「それならよかったです」 「館野先生の方はいいの?奥さんが今から私とお茶しちゃっても」 「うちは急患で呼び出しかかっちゃって。だから大丈夫です」 「そっかー。大変ね」 わたしは話の流れで出しただけの言葉だったけれど、オジョウサマにとってはそうじゃなかったらしい。 「大変ーーー大変ですよね。ほんと、この先育児も増えるのに大丈夫なのかな」 そう言って急にポロリと大きな涙をこぼした。 うわっ、ため込んでるじゃん、この子!! いつもニコニコしていたけど、今までのプレッシャー、これからの生活、ストレス、不安諸々を抱え込んでいたのだろう。 結局人目がある談話室を諦めて、オジョウサマを自分の個室に連れ帰り消灯時間まで話を聞いて過ごした。 いい子がいい子なせいで苦しみ、不安を抱えていた。 この子は気を遣いすぎなんだろうなと思う。 私は噂でしか知らないけれど、館野先生との結婚前にはヒステリックな勘違い女医に嫌がらせされていたらしいし。 本人が悪いわけではないのにそこに居るだけで妬みを買う。 他にもあるんだろうな、いろいろと。 妬んでいた一人としては相当耳が痛いし、本当に心から申し訳ないと思う。 お詫びといってはなんだけど、同じ日、同じ時間帯に出産した仲間としてこれから愚痴聞き係になろうじゃないか。 もちろん、彼女が希望すればの話だけど。
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