食のアドバイス

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食のアドバイス

政子は一人、食事をしている。 本当は正幸としたいが美玲もセットでついてくる、あの女と一緒などまっぴらごめんだ。 白米に昔からよく食べているきゅうりと茄子の漬物の組み合わせ、質素だが政子にとってはご馳走なのだ。 モグモグ・・・ポリポリ・・・モグモグ・・・ムシャムシャ・・・ ん? 美玲の視線に気づく政子。珍しい、あの女の方から私の視界に入ってくる事なんて滅多にないのに。 「あ、あの・・・お義母さん」 「私には娘なんていません」 取り付く島もない。しかし美玲は勇気を振り絞って言葉を続ける。 「人間は加齢と共に味蕾という味を感じる細胞が減少します」 「はあ⁉」 まさか美玲から「加齢」「味蕾」そんな言葉が出るなんて!驚愕する政子。 「それによって、どうしても濃い味付けを好むようになり塩分の過剰摂取につながるみたいです、お漬物は塩分が多いのであまり沢山食べない方がいいかと思います」 「ふ、ふふ、ふふふ、何それ⁉テレビか何かで学んだのかしら?知ったかぶりで私に説教でもしたいのかしら。塩分を取り過ぎたから何だって言うのよ!塩は体にイイのよ!それによって何が起こるの?どうせ説明できない癖に中途半端な知識を振りかざして私の食事の邪魔をしないで!」 反論に怯む事無く、美玲はまっすぐ政子を見つめると話し始める。 「塩分の過剰摂取は高血圧、水分不足を招きます。高血圧は心臓への負担を増加し、脳梗塞のリスクを高めます」 「う、嘘・・・どうしたのよアンタ・・・」 政子は漬物が入った小鉢にラップをかけて冷蔵庫にしまうと白米だけを流し込み、自室に戻ろうとした。 「それと・・・」 「何よ」 「塩分を取ったら必ず水分も取ってください、お酒やコーヒーは駄目ですよ」 「うるさい!!」 ピシャっ!!と戸を閉めてしまった。 凄い!私が一方的にお義母さんに口喧嘩で勝つなんて!この前よりもっとダメージを与えられた気がするわ。 この調子ならお義母さんが死んでしまう日は近いわ! よし、もっと勉強しよう! 美玲の勤勉意欲はますます膨らんだ。
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