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一緒に住んだら
「みっくん、ただいま。おでん買ってきたよ。早く飲も」
「お帰り、駿」
俺が持ち帰った期末テストの採点をしていると、社会人一年目の駿が帰って来た。お土産にコンビニのおでんと缶ビールを下げて。
なるほど、今日はそんな気分なのね。
思わず頬が緩みそうになるのをぐっと堪える。
「お疲れ。毎日遅くまで大変だな」
「へへっ、みっくんの顔見たら元気出るから大丈夫」
駿が子供のような顔で笑う。コートを脱いだ駿は俺の手元を覗き込んだ。
「みっくんこそ、帰ってからも仕事お疲れ様。後で僕も手伝おうか?」
「これから飲むって言ってる奴に任せられないよ。それにもう終わりそうだし」
少しだけ手を止めて「ありがとな」と言うと、駿はにこっと笑って、ふんふん鼻歌なんか歌いながら箸と取り皿の準備を始めた。俺は急いで残り二枚分の採点に取り掛かかる。
今回のテストの成績はあまり芳しくない。中学数学は小学校の算数より難しいとはいえ、一年生でこの程度の点数とは先が思いやられる。ああ、頭が痛い。
こんなときは。
「よし、飲もう」
片付けを終えると準備はすっかり整っていた。アツアツのおでんが湯気を立てている。狭いコタツにぴったり並んで座ったら。
「さ、お楽しみのおでんタイムだよ」
プシュッと軽い音と一緒に駿の楽しそうな声が響いた。
俺と駿は家が隣同士だった。超がつくほどの田舎で、近くに遊ぶ友達がいなかったってのもあるけど、俺たちはよく二人で遊んだものだった。いや、俺が駿の面倒を見ていたっていうのが正しいのかもしれない。
あの頃はまさか、大人になってこんな風に一緒に暮らすことになるなんて思いもしなかった。
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