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曲がり角
青い空、ちょこちょこある雲、足下に落ちている桜の花びら。
……今日は、私・結城茜の入学式だ。
晴れて、高校生デビュー!
「んーーーーっっ!晴れて良かったね、ナツ!」
「マジでね~。昨日まで、雨ドシャ降りだったのにねぇー」
そう答えたのは、私の幼馴染み&彼氏の櫻田奈紡。
「ちょっと雲あるし、桜も雨で散っちゃったけどねぇ」
「そこは見えなくていいんだよ、ナツ」
「世界には見えなくていいものもある」
「そう。それが私の哲学」
「っていうかさ、この制服メッチャ可愛いよね‼ナツも似合ってるよ」
「うん。そのねー、深緑?が茜にめっちゃ似合う」
「♪」
チャーンチャーンチャチャーン~~~♪
「朝日市立高等学校、73回生のみなさん。初めまして、生徒会副会長の黒木冴玖です。今日は、生徒会長の斎藤美恋が不在ですので代わりを務めさせていただきます」
所々から聞こえる黄色い悲鳴。
黒木……先輩?は顔を歪めている。
まぁ、確かに、顔はすごく整っているとは……思うけど。
「おいなんだよこれ!聞いてねぇぞ!おいアイツほんとどこ行ったんだよ‼」
ONになったままのマイクから聞こえる、小さな怒号。
これには、黄色い悲鳴も引っ込んでしまっていた。
「あー、すみません。こちらの都合で少し外さないといけなくなりまして。では!ハハハ!」
そう言って笑うあの人は、ゴォンッとマイクを外した。
そこらへんにいた人にマイクを押し付けて、
「代わりにやれ」
と凄い形相で言った。
後にやる人は、「すっ、すすす、すみません(汗)っっっ」と言ってから挨拶を始めた。
無事(?)入学式は終わった。
「はぁーー、なんかもう疲れたなぁ………」
教科書で詰め詰めのリュック、重い脚、情報を一気に詰め込まれた頭。
とっとっとっと
曲がり角の先、何か聞こえる……?
いや、空耳だ。
疲れすぎで幻聴まで聞こえるようになったのか、私の耳。
とっとっとっと
聞こえる。やっぱり聞こえ……
時、すでに遅し。
ドカッっ
「~~~~~っ!痛……、あ、すみませんすみませんすみません!!!大丈夫ですかっ!!?」
「った………すみません、大丈夫です……っておい、ウチの制服じゃねぇか」
「え?」
黒髪にマッシュ、赤い目の顔がきれいな人は言った。
お?おぉ?
黒髪にマッシュ、赤い目…………
「あっ!もしかして、黒木先輩ですか!?」
「おまっ…………あぁ、新入生か。めっちゃ制服汚れてるけど……」
「いやまぁショックですけど!!気づかずぶつかった私のせいですから」
「…………てかどこ連れてく気だ?腕離せ?おいっ?」
「え?あぁいや、先輩頭打ってましたよね?っていうかその角曲がってきたってことは学校戻るつもりだったんですよね?丁度いいので学校行きます」
自分がぶつかって怪我させたなんて、夢見悪すぎる………
なんてことは、先輩に見えなくていいことだ。
「もうほんと大丈夫。大丈夫だから離せ。離せぇぇぇぇ!!」
「先輩うるさいです!近所迷惑です!暴れてる病人じゃないんですから、黙っててください」
「あぁ!?」
「それでも副生徒会長ですか……、はぁ。」
「はぁ。じゃねぇよ、なにがはぁ。だクソが!!次期生徒会長だよ!!」
「……………」
「目でモノを語るんじゃねぇ!!」
…………その後長時間モタモタし、このままでは本当に近所迷惑なので学校に行くのは止めることにした。
「先輩、本当に大丈夫ですか?本当ですね?」
「あぁ。だから前からずっと大丈夫だっつってんだろうが」
「…………違ってたらすみません。もしかして、家そこのマンションですか」
「それの何が悪い。っていうかよく分かるな」
「いや、ここらへん昔っから住んでて土地勘あるので。まぁここほっそい道多いですし、曲がり角も多いので。気をつけてくださいね」
「本当におせっかいだな、お前」
「おせっかい上等です。あと、私結城です。じゃあ、帰りましょうか!」
「は?」
「え?いや、うちそのマンションなので」
「嘘だな」
「嘘じゃないですが」
曲がり角。
あなたは曲がり角で実際に、人とぶつかったことはありますか?
パンをくわえたセーラー服の少女と、イケメン男子………
なんてことを想像しないでくださいね。
危険ですが、出会いの場所にもなるようですね。
曲がり角を通るときには、確認してから曲がりましょう。
お気をつけて。
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