四杯目 ビジネスの基礎は「ヒト、モノ、カネ」。

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四杯目 ビジネスの基礎は「ヒト、モノ、カネ」。

「戦国時代の話だろ? 大名で言えば加賀藩ができる前だから、越前の朝倉氏か越中畠山氏あたりか?」 「市場経済が発達する前だし、山奥過ぎて大名支配も及んでいなかったろうね」 「後は寺社勢力か、商人てところか」 「どっちも絡んではくるよな。両方とも勢力拡大を基本理念にする集団だからね。しかし、経済というキーワードを基準に考えるとどうなる?」 「そりゃ堺商人しかいないな」  時は安土桃山時代だ。中国やアジアとの交易で莫大な富を築き上げていたのは、間違いなく堺商人であった。  納屋衆など多数の分限者(ぶげんしゃ)がおり、堺は一種の自由都市であった。 「日本から硫黄を輸出する代わりに硝石を輸入していたんだが、商人というやつは欲が深い」 「そりゃ商売だからな」 「輸入硝石に高い金を払わされるのは業腹だ。何とか自分達の息がかかったところで作れないかと」 「国産化を仕掛けた訳か」  商人はビジネスを企画する。現代の商社と同じである。ここで必要になるのは製造ノウハウと知的財産管理だ。  虎の子の製造技術を盗まれたら、独占が崩れ創業者利潤が消えてしまう。 「技術者と組まなきゃ、持続可能なプランにならないのよ」 「ここで裏方が暗躍する訳か」  何となく構図が読めた。  製造技術者とは土師氏(はじし)であった。それも菅原道真の系譜を引く一族。彼らが硝石製造ノウハウを携えて秘境五箇山を訪れ、里人に製造委託したのだと言う。
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