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「代わりの魔女を見つけないとヤバイな…。」
ケンは一人呟く。しかし、こんな田舎の寂れた町に協力してくれそうな人を探すのは至難の技で、代わりの魔女を会社に要請しても、早くて一週間、悪ければ1ヶ月以上はここで待ちぼうけだった。
気づけば時刻21時を回っていた。ケンは腹が減っていたことに気づいた。
「しょうがねぇ、飯でも食うか。会社への連絡は明日でいいだろ。」
高い運転席を器用に降りて、ダイナーに向かう。できれば、今日くらいは運転席ではなくベッドで眠りたい。宿も手配できるか聞かなくてはいけない。
この世界のほとんどの女性は多かれ少なかれ魔女である。魔女というと火を吹いたり、雷を起こしたりできそうなのだが、それができるのは古い魔女の血筋で王家の人間くらいのものである。多くの魔女は魔力増幅機に魔力を送り込み、動力源を作る仕事をしている。トラックを絶えず動かすとなると相当魔力が強い魔女でないといけないため、誰でもいいわけではないのである。
ダイナーの扉をくぐる。ウェイトレスが一人と客がまばら、地元客とケンと同じようなドライバーと魔女が数名いるだけだった。
ケンはカウンターに腰かけると、ウェイトレスとが今日のオススメのメニューを持ってきた。ハンバーグとポテトのフライ。ありがちだが、腹の虫には勝てず、それを注文した。
どうせ動けないのでと、ビールを注文しようか迷っていた時だった。
「彼にビールを。」
カウンターの一番端に座っていた女性が言った。ケンは女性の方を向くと目があった。
年の頃はケンと同じくらいで20代前半といったところだろうか、黒い髪を後ろで一本に纏めている。目鼻立ちがやけに整った美女だった。
「そいつはどうも。でも、見ず知らずの女性にビールを奢られるほどモテる男じゃないはずなんだけどね。」
「そうかしら、私はあなたを知ってるわ。」
美女は微笑みながら言った。
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