遥かなる故郷は宇宙

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 マックウィーはスカイの姿を見送ったあと、隣のオノに話しかけた。 「あいつならやってくれるな?」 「やれるでしょう。うまくソシアの部隊に合流できれば」  オノは含みのある言い方をした。 「なぜロン・ワトソンは輸送機や護衛用の戦闘機を出さなかったと思う?」  マックウィーがオノに尋ねる。 「こんな田舎での戦には興味がないのでしょう」 「いや、違うな。ワトソンはどうもルー・ソシアを嫌っている」 「そうですか。それではスカイたちは」 「うむ。あまりいい状況でないことは確かだ。あとはスカイたちの運命に任せるしかない」 「ワトソンはスカイたちのことをルー・ソシアに話しておくと言っていましたが」 「それすら怪しいものだ」  スカイに命令を与えた時の毅然とした態度はすでになく、旅立つ子供を心配する親の顔のマックウィーがあった。  スカイは新型のFマシーン、105に乗り込んだ。連邦軍がFマシーンを開発しているとの情報を得た同盟軍がF104をベースにFマシーン同士の戦いを想定し強化が図られたマシーンだ。  新しいマシーンに心が躍る。擦り切れるほど操作マニュアルを繰り返し読み、この瞬間を待ちわびてきた。  軽く基本動作を行い、マニュアル通りの動きに満足する。自分の予想よりいい。F104に比べ、これくらいになるだろうと思っていたよりもさらに上のレベルにある。  軽く感覚を掴んだ後、エンジンパワーを全開にする。性能の限界を知っておくこと。頭で知っておくのではなく、体に覚えさせておく。  スカイの操る水色の機体は地を走り、空高くジャンプした。  翌日の朝、スカイはユウのF104と共に基地を出た。ジャンプを繰り返しながら進む。森を抜けるには早くていいが、少ない着陸地点を一瞬で見つけなければならず、普通のパイロットなら難しいやり方だ。この地で戦闘を繰り返してきたスカイやユウならではといえた。  スカイたちの進路には宇宙同盟軍の基地も数カ所組み込まれており、十分な補給はしてくれるはずだった。スカイが単独でソシアの元に向かおうとした時は、その点では行き当たりばったりだった。 「敵機襲来!」  見張り番の兵士が叫び、警報を鳴らした。 「拡散! 散れ!」  隊列の前方を娘と共に進んでいたホウジョウは咄嗟に叫んだ。後方でも誰かが怒鳴っている。  兵士たちは乗り物を降りて森の中に駆けこんだり、車のまま森の中に乗り入れた。 「敵は何だ!」  対戦車バズーカ砲を調節しながらホウジョウが叫ぶ。 「F104二機・・・・・いや、一機は新型!」  双眼鏡で遠くを見る兵士の声が、たちまち近づいてくるロケットエンジンの音にかき消された。  二機のFマシーンが隊列の頭上を飛び去った。一機目は水色の見たことのない機体だ。艶消しの塗装をしてあるのだが、まだ実戦を経験していないのだろう。鮮やかな水色に見えた。  F104の改良型か?   ホウジョウは思った。  F104型に似ていた。一瞬でよくわからなかったが、装備はかなり違うものを備えているように見えた。いずれにしろ、水色のFマシーンを見るのは初めてだった。同盟軍は次々と新しいFマシーンを開発していると聞く。新型が配備されたとしてもおかしくはない。 「データは取ったか?」  ホウジョウは大声で森の兵士たちに尋ねる。 「取りました」  一人の兵士がたった今記録した機体のデータを参照しながら答えた。 「F104と、もう一機はF105と呼ばれる新型です。実戦ではこの近くに派遣されたルー・ソシアという指揮官が率いる部隊に配備されたとの記録があります」 「では今のはその部隊のマシーンか?」 「多分違うと思います」 「新型の実戦配備が始まっているということか」  ホウジョウはつぶやくように言った。  頭上を通り過ぎていったFマシーンはこちらを攻撃するつもりはないようだった。すでに遠くまで行ってしまっているだろう。 「データは基地に送ったな」 「はい」  ホウジョウは部下から小さなモニターを受け取り、先ほどの新型Fマシーンの画像を見つめた。 「連邦軍でしたね」  ユウが無線で話しかけてくる。 「気が付いていたか」 「もちろん」 「無用な戦いは避けたい」 「はい」  スカイは昨日攻撃した軍隊の兵士たちだろうと思った。あの親子もあそこにいたに違いない。できればずっと死なずにいてほしいと思った。
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