遥かなる故郷は宇宙

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 宇宙同盟国軍前線基地、ラ・シューの指揮官キイダ・マックウィーは私室にいた。スカイはドアをノックし、返事を待ってから部屋に入った。右手を挙げ、敬礼をする。 「ご苦労だった」  年老いた指揮官が、戦場から帰ったパイロットにねぎらいの言葉をかけた。 「すみません。ミサイルの直撃を受け、Fマシーンを傷つけてしまいました」  スカイが言う。 「報告は受けている。気にするな」 「それで・・・・。新型Fマシーンの事なのですが」 「うむ。この激戦の地で格段の働きをしているお前に、是非乗らせてやりたかったのだが」 「運搬途中で破壊でもされたのですか?」 「いや」  マックウィーは視線を上げ、壁の大型スクリーンに映る外の景色を見る。 「連邦軍が最新式の航空戦艦を建造したことは知っているな?」 「はい」  宇宙同盟国軍の軍事力に対抗するために建造された新進気鋭の巨大戦艦で、電波妨害の著しい地球上で戦うための重火器を装備し、宇宙同盟国軍のFマシーンを研究して造り上げた連邦軍独自のFマシーンを搭載しているといわれている。その連邦のFマシーンは試作型の最終形で、その機体を元に量産を進めるともいわれている。  戦艦は戦闘機やFマシーンを放出するためのカタパルトが二つ前方に突き出していて、機体中央部には二つの突起したドラゴンの頭に似た艦橋を持っていることから、同盟軍は双頭竜あるいはダブルドラゴンと呼んでいた。  宇宙同盟国軍はその戦艦やFマシーンの戦闘力や性能を測るために何度か戦闘を仕掛け、見事というほどに撃退されている。それほどダブルドラゴンや連邦のFマシーンが優れているという事を示していた。 「その航空戦艦を撃墜するために宇宙から派遣された部隊があり、新型のFマシーンはそちらに回された」 「宇宙で戦争をしていた奴らが、地上用のFマシーンを使って最新式の戦艦と戦おうっていうのですか?」 「かなり腕の立つ連中らしい。私も名前は聞いたことがある。ルー・ソシアの部隊だ」 「ソシア?」  突然スカイは顔色を変え、狼狽えた。 「どうした? 知った名か?」  指揮官の問いかけに、スカイはしばし答えをためらった。 「ルー・ソシアは知っています。私の父がルー・ソシアの父、ダスバル・ソシアに仕えています」 「ほう。ルー・ソシアは名家の出と聞いたが」 「はい。できれば私をソシアの元に遣わせください」 「ん?」  マックウィーは眉を曇らせてスカイを見る。 「ソシアと一緒に連邦軍の戦艦やFマシーンと戦いたいと思います」 「駄目だ。お前を失うのはこの基地にとって大きな痛手となる」 「ユウ・リがいます。イワンだって、今じゃかなりできます」 「ソシアの部隊とは管轄が全く違う。無理な話だ」  マックウィーの言葉に、スカイは口をつぐむしかなかった。  スカイはマクタを捜して再び地下のドックへと下りていった。 「スカイさん!」  後ろから声をかけてきたのは、一緒に出撃していたユウ・リだった。 「大丈夫でしたか?」  スカイに並んで歩きながら、ユウが話す。 「俺は何ともないよ。マシーンの腕がいかれた」 「女の子はなぜあんなところにいたのですか?」 「よくわからないが、逃げた子犬を追って森に迷い込んだらしい」  Fマシーンの狭いコックピットの中で、少女は名前だけ教えてくれた。  ヒナタ。  ユウと同じように東洋人に見えた。 「名誉の被弾でしたね」 「俺がトロくさかっただけだ。それより、マクタを知らないか?」 「ボロンさんと二人でスカイさんの104に取り付いていましたよ」 「ありがとう」
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