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依頼者は女子高生
「そんなことが可能かどうか、きみはきみの常識を否定したのかい?」
なんか難しいこと言ってる。
「祖母から聞いたんです。ここは死者と話をさせてくれるところだと」
「いやまいったな…」
彼は頭をしきりに掻いた。ボサボサな髪がよけいにボサボサになった。しばらく彼は何か考える風にくもりガラスの窓に目をやっていた。
「あの…だめなんでしょうか?」
あたしはたまらずそう聞いた。
「たしかにそんなことをうちの先々代はやっていたことがあるけど、うちの親父の代になってからはもうそうゆうことはやってないんだ」
まあそうだろうなとは思った。藁にもすがる思いで来たけど、現実にそんなことはあり得ないんだ。
「わかりました。お騒がせして申し訳ありません」
あたしははやくこの場から立ち去らないといけないんだ。もう恥ずかしくていても立ってもいられない。
「あー、ちょっと待って。いまお茶入れたから」
「はあ…」
お茶を入れた様子なんてなかったけど?けれど奥から足音がし、紺色ののれんをくぐって奥から男の子が出てきた。
「お待たせ」
「ありがとう、蛇の目」
男の子が器用にテーブルに茶器を置き、それに紅茶を満たしてくれる。いい香りがする。
「またマンガ見てていい?」
「かまわないよ」
男の子はチラとあたしを見て、プイとそっぽを向いて奥に入って行った。彼はばつの悪そうな顔をしてまた頭を掻いた。
「不愛想なやつでね」
「弟さんですか?」
「いや違うよ。なんていうのかな、知り合いの子、かなあ」
大丈夫かこいつ?ヤバいやつじゃないのかな?
「あの子、じゃのめくんって言うんですか?面白い名前ですね」
「そうかな。あ、ぼくは白辺かなめ。ここの店主。きみは?」
「佐々木京子です」
「私立赤城女学館の制服だね」
「二年生です」
くもりガラスの窓の明かりが、ぼやーっとテーブルを照らしていた。
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