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プロローグ 仕事終わりの残骸(超近未来に出会う、上司と同僚の話)
砂混じりの風が吹き荒れる果てた地に、かろうじて原形を留めた大きなドーム型の建物が一棟建っている……。
銀髪を指先で数回掻き、色白の肌にスカイブルーの瞳を持つ10代半ば位の少年が1人、建物の前で軽く腕を組んでいた。
藍色の軍服、腰には細い剣を携えた少年は足元の障害物を蹴り飛ばし、躊躇なく建物に入る。
一通り中を見渡した後そのまま視線を床に落とし、少年は鼻から二酸化炭素を吐いた。
自身の服に付着した砂を払いつつ、すぐ横の石壁に寄りかかる少女に問う。
「『1人は残せ』と、言ったハズだが?」
手に持っていた凹みが目立つピンク色の水筒を、肩から斜めに掛け、足元に置いてある茶色いランドセルを背負う少女。
短い赤毛を2つに結った丸目の彼女は、わざとらしくあどけない笑顔を見せる。
「そうだっけ!? 忘れてたぁー!」
「……まあいい。帰るぞ」
「うん!」
2人は建物内外にある無数の死体を放置したまま、砂嵐の中に消えていった――。
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