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 今日、ずっと好きだった先生に告白した。  勿論、答えはNoだった。  最初から分かってた。こうなることくらい。  私たちは先生と生徒。それ以上の関係には絶対になれない。  それに、  先生には奥さんがいる。  私のことなんて、ただの子供としか見てなかったよね。それが普通だと思う。  でもね、私は先生のこと、本気で好きだったんだよ……。  これまで秘めていた想いを先生に伝えたこと、私は後悔していない。  だから、今日できっぱり諦める。  うん、諦める……。  自信はないけど……。  泣かないって決めたから、私は泣かない。  ……つもりだったのに、  不思議と涙が溢れてくる。  初めて、泣きながらこの帰り道を歩いた。  家に着くまでに、必ず地元の商店街を通る。八百屋さんも魚屋さんも、みんな毎日私に声を掛けてくれるのに、今日は誰も声を掛けてこない。  私が泣いてるからかな…。ちょっぴり寂しかった。  でも唯一、私に声を掛けてくれたのが、精肉店のおじさん。  おじさんは、揚げたてのコロッケを私にくれた。“これ食べて元気出して” って。  嬉しかった。私はコロッケを握り締め、商店街を抜けた。  もうすぐ家に着く。でも、帰りたくない。こんな気持ちのままで家になんか帰れない。  私は、家の前を通り過ぎ、その先にある公園へ向かった。  ベンチに腰掛け、さっきのコロッケを一口かじった。温かくてホクホクで、とても優しい味がした。一気に傷心の私を包み込んでくれた。  何故かまた涙が溢れた。 「おい、莉乃(りの)、どうした?」  顔を上げると、そこにはクラスメイトの舞斗(まいと)がいた。  舞斗は私の隣に座った。舞斗は、トレーニングをしにこの公園に来たのだと言う。 「あ、それウチのコロッケじゃん!もしかしてウチの親父から貰っただろ?」  舞斗は嬉しそうに言った。 「うん。これめっちゃ美味しい。ご馳走様でしたっておじさんに伝えてね。」 「おう!……ってかさ、莉乃何かあったんだろ?目、真っ赤だし。」  舞斗にはもうバレバレだった。  私は食べかけのコロッケを握り締め、先生にフラれたことを、ゆっくりと舞斗に話した。 「そっか…。そうだったんだ…。」 「先生を好きになるとか、バカみたいでしょ、私…。」 「そんなことねーよ。好きになったら、相手が誰とか関係ねぇだろ。」  舞斗は何一つ否定することなく、私の話を受けとめてくれた。それだけで物凄く嬉しかった。 「莉乃、すげーなお前。めちゃめちゃカッコいいよ。」 「え?フラれた私が?何言ってるの?惨めなだけじゃん…。」  私は俯いたまま、顔を上げることが出来なくなった。 「自分の気持ちに正直になって、真っ向勝負したんだろ?なかなか出来ねーことだよ。普通だったら逃げちまうよ…。莉乃の勇気、すげーよ!」  フラれて情けないはずの私は、ここで舞斗に褒められて、少しだけ心が軽くなったような気がした。  私は顔を上げて、隣にいる舞斗を見た。 「ありがと。慰めてくれて。」  私は舞斗にお礼を言い、残りのコロッケを頬張った。今まで食べたコロッケの中で一番美味しかった。 「ありがとね、舞斗。おかげで私、明日からまた頑張れそう。」 「そっか。でも…、先生のこと、そう簡単には忘れられないだろ?」 「………………。」 「いいんだって、忘れるのに時間かかったって。それでいいんだよ。自然に忘れられる時が必ず来るから。」  舞斗には全てお見通しだった。精一杯の強がりも、舞斗には通用しないって訳か…。 「私、こんな辛い思いするなら、もう恋なんてしない。」 「まぁ…、そうだろうな。今はそうとしか思えねーよな。」  舞斗は柔らかく笑って、私の頭をポンポンとした。そしてベンチから立ち上がった。 「俺も負けてらんねーな。莉乃見習って、勇気振り絞らねーとな。」  舞斗はくるりと向きを変え、私の方を向いた。 「じゃあ、明日またな、莉乃。ウチのコロッケ、これから莉乃にずっとタダで食わしたるからな。」 「えっ?そんな、それじゃ悪いよ。ちゃんと次から100円払います!」 「いや、そういう意味じゃなくて……。」  舞斗は私に一歩近付いた。 「莉乃が先生のこと、完全に忘れることが出来た頃に、  俺が莉乃の彼氏に立候補するから。」  舞斗は走って公園を後にした。  さっきの舞斗の言葉、  ちょっと本気にしてみようかな……。
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