第一歌 今日の京都はあやしき秋模様

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 ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◆  あやかしの悪戯に合いながらも、はやては平然と京都駅の出口へと向かっていた。けれど道に迷い、駅内をうろうろとすること三十分。ようやく出口の烏丸中央口を発見する。 「も、もうやだ。ここ、迷う……」  疲れきった背中を丸め、壁に(もた)れた。右肩のボストンバッグ、左手の大きな籠を一旦床へと置く。  スマホを弄り、現在地を確認した。マップのピンは京都駅を刺している。 「えっと、ここから東本願寺へは……」  スマホをスライドし、周囲を見渡した。  京都JR中央口から出れば、前方に見えるのはバス停。金閣寺や清水寺、貴船神社など、京都の観光地行のバスが次々と押し寄せていた。当然、客もしかり。夕方にも関わらず、列がなくなったかと思えばまた伸びていく。  ──地元よりも遥かに都会で、人の出入りは比べ物にならない。  これが観光地の魔力かと、感心する。 「……久しぶりの京都だなあ。ちっとも変わってないや」  記憶の奥深くにある京都の町並みを思い浮かべた。  あの頃も今のようにバス停には人が波のように押し寄せていた。通るのも一苦労で、目的のバス停に着いたとしても時間通りに乗れるのか。運が悪いと満員になり、次まで待たなくてはならなかった。  さらにバス内は缶詰め状態が常で、目的地に到着する頃には体力がなくなってしまう。はやてが、そんな観光地であるがゆえの体験をしたのが十二年ほど前。  あの頃と何も変わらない景色が懐かしいなと微笑み、最新の旅行本片手に心踊らせた。 「──とっ。これから仕事先に向かわなきゃ。えっと……東本願寺付近にある【あやしゑ商会】は……」  右肩にボストンバッグをさげながら、観光本と現在地を交互に見る。ふと、足元にある籠が小さく揺れた。 「あはは、お前たちもそう感じるの?」  籠の表面を触り、いとおし気に見つめる。それが終わると、観光本に載っている地図を広げた。  京都駅を中心に左は嵐山、右は清水寺。上には貴船があり、下は伏見稲荷となっている。目的地である東本願寺は京都駅より少し上にあった。
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