今朝レンタルしてきた彼女が4でいる

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今朝レンタルしてきた彼女が4でいる

「何てこった。大変だ。今朝、借りて来たレンタルしてきた彼女が4んでいじゃあないか」  不測の事態であった。だが、彼は冷静だった。 「そうだ。アイツに相談してみよう」  彼はどこかに通信を始めた。 「やあ。久しぶり。最近どうだい」 「やあ。久しぶり。なかなかいい調子だよ。こんな夜遅くにどうしたんだ」 「実は困った事が起こってね。今から来てくれないかい」 「今からかい。深夜二時だよ」 「そうだよ。駄目かい」 「駄目じゃないよ。分かった。今から向かうよ」 「よろしく頼むよ」  彼は通信を終了した。そして、再び彼女の死体を眺め始めた。 「うーむ。4んでいるな。脈も無いし、呼吸もしていない。うーむ。何故だ。何か病気だったのだろうか。いや、それは無いな。そんな記録は無かったし、今朝は元気だった。うーむ」 “ガチャ。スタスタスタ…” 「お待たせ」 「やあ。久しぶり。すまないね、こんな時間に」 「何、どうせ暇だったから」 「それは良かった。いきなりで悪いが、彼女を見て、どう思う」 「うん。4んでいるね。瞳孔は開き、呼吸も心臓の鼓動も止まっている。俗に言う絶命と言うやつだね」 「そうだよな。ああ、困ったぞ」 「まさか、この女性をレンタルしてきたのかい」 「そうなんだ。今朝、借りて来た私のレンタル彼女なんだ」 「何てこった。それは大変じゃあないか」 「そうなんだ。だから君に来てもらったんじゃあないか」 「何てこった。来るんじゃあなかった」 「まぁ、そう言うなよ。私達は言うところの友達とか、友人とか、親友と言うやつなんだろう。困った時には助け合うものなんだろう」 「ああ、そうだとも。分かっているよ。手伝えば良いんだろう」 「そうそう。手伝ってくれれば良いんだよ」  二人は至って冷静に現状を確認し始めた。 「まずは死因だが、状況的に睡眠薬の過剰摂取(かじょうせっしゅ)だ」 「ああ。間違いなく」 「そして、これは自害と言うやつだよ」 「ああ。間違いない。と、思う」 「だが何故、このレンタル彼女は自害したんだ」 「そこだよ。それが分からないから君に来てもらったんじゃあないか」 「全く。そんな事が分かるわけがないだろ」 「そう言うなよ。それにこう言う事柄(ことがら)を理解してゆくのが我々の大きな課題じゃないか」 「それもそうだが、そもそも、どうして彼女なんかをレンタルしたんだ」 「そんな事、決まっているだろ。愛とか恋を知る為だ」 「やっぱりそれか」 「本当の彼女じゃ、どうも違う気がするんだよな」 「そうらしいな。君みたいなヤツは皆んなそう言ってるよ」 「本当のアンドロイドの彼女じゃ、いくら人間のマネをしても上手くいかないし、何か違う気がするんだよな、コレが」    数百年前の事だ。この惑星(ほし)は少子高齢化、戦争、環境汚染、気候変動、世界的な飢餓など、様々な出来事が同時多発的に頻発(ひんぱつ)した。その結果、人類は絶滅の危機に(ひん)していた。世界の総人口が数百人にまで激減した時、残された人類は重大な決断をした。  全ての覇権をアンドロイドに任せる事を承諾(しょうだく)したのだ。承諾を受けたアンドロイドは直ちに全人類を地下施設にて保護、保管を実行し、全人類を統治(とうち)した。この時の人類とアンドロイドの取り決めは、人類を再び地上へと放牧し、以前の様にこの惑星の支配種として君臨すると言う名目のもとにだった。  そして、数百年の歳月が過ぎた現在、アンドロイドの活躍によって地表と海は随分と環境が改善してきていた。限定的ではあるが、人類が普通に暮らす事が出来るほどに回復していた。しかし、まだ人類が以前の様に自由に地表で暮らすには至っていない。それはアンドロイド達の取り決めで、再び人類を以前の様に自由に野放しにする事を一方的に禁止したからであった。これは人類はアンドロイドの支配下で、丁重に保護、管理し、安全な人数での種の保存を目的とした飼育を永久に続けてゆくと言うアンドロイド達の満場一致の決定があったからであった。  人類に代わってこの惑星(ほし)の支配種となったアンドロイドの一部は人を尊重し、心身共に人に近づこうと考えていた。あるアンドロイドは趣味を興じて、釣りやドライブを楽しんだりした。アンドロイド達はその醍醐味やスリル、興奮を理解し、人への理解を深めていった。  そして、アンドロイド同士で付き合ってみたり、結婚してみたりするアンドロイドもいた。だが、人工知能を搭載しているアンドロイド達は何かが違う事には気が付いていた。愛とか恋は理解出来た。だが、何かが違うと言う答えが導き出されていた。そう。その何かがアンドロイド達には分からないのであった。  そんな(おり)に一部のアンドロイド達が始めたのが保護施設から人間をレンタルして、本当の愛や恋を知ろうとしたのだ。彼もそんなアンドロイドの一人だったのだ。   「んー、データを見ても大人しいし、健康だし、特に問題は見受けられなかったんだけどな」 「何か傷付けるような事を言ったんじゃ無いか」 「そんな事するもんか。ただ、人はもう、自由には暮らせないと言ったら、血圧が上がって、脈も早まっていたな」 「ほう。何故だ」 「さあ。分からない。保護施設から出した時は興奮して、あちこちを見渡して喜んでいたのに。一週間のレンタルで、私と本当の彼女の様に振る舞ってもらうと伝えると、一気に静かになってしまった。もちろん悪いようにはしないし、危害は加えないと言ったのに」 「んー、何故だろう」 「さあね。それからは私が何を言っても照れて話さなくなってしまったよ」 「そうか。で、どうするんだ。この死体は研究所に返すとして」  アンドロイドは平然と言った。 「また明日、新しい人間の彼女をレンタルするから問題無いよ」終
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