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指定された画像投稿サイトの、元妻のページにアクセスしてみる。元妻の言う通り、幻想的な一面の青い花畑の画像が何枚も載っていた。撮影された日は曇り気味で、空はやや白かったが、まるで天と地を引っ繰り返したかのように、雲一つない広大で真っ青な地面が曇り空を照り返している。息子の勇気の画像もある。青い花畑を背景に、海老名の前ではなぜか絶対に見せない、満面の笑みをたたえて。
仕事を完全に忘れた状態なら、何時間でも見続けていたいほどの美しい光景ではあるが、海老名の刑事としての職業魂は、これらの画像を見てすぐに警報を鳴らし始めた。特にこの青い花の拡大画像を見た時……青い花びらが5枚、真ん中でくっつき合っているが、そのくっつき合っている部分だけが白く、ちょうど花の真ん中の部分が形よく丸い白を帯びている、そんな花。
この花、どこかで見たことがある。
すぐに思い出した。滝野幸司の家の庭先にあった鉢植えだ。あれ、何て名前の花だっけ? 確かフェラチオ……じゃない、バカ。でも確かそんな名前だったような……ああ、何て名前の花だったっけ? 海老名はすぐに元妻にメールを返信した。
「おまえの✕✕✕✕見たよ
確かにきれいな花畑だね
ところであの青い花、何て名前?」
メールを送信してから、すぐに気づいた。もうこんな真夜中じゃないか。彼女にも仕事がある。こりゃ朝になるまで返事が来ないんじゃないか? 海老名の目の前に広がる誰もいないフロアが、酒のせいもあって急激に溶け出していく。
まずい、早くしないと。でもどうしたらいい? あの花の名前さえわかれば、全てがわかりそうな気がするのに。真犯人も、滝野幸司が何を隠しているのかも、特に父親の幸彦に関する秘密も……とにかく落ち着け。
海老名は酒を飲み続け、もう1本煙草を吸う。そうしている間に、元妻からの返信メールが届いた。先程送信してから10分もたっていない。まだこの時間でも起きていたのか。
メールに書いてある例の花の名前を見て、全てを思い出し、全ての謎が解けた。
そして海老名は名刺ホルダーを取り出すと、この時間にも関わらず、ある人物に電話をかけ始めた。
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