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「遅くなりまして、大変申し訳ありません」上野刑事が開口一番、会議室に集まっていた面々に謝罪した。「今回の事件に関して捜査が難航を始めた、という報告を耳にしました。何としてでも事件の解決に向けて、今よりもさらに力を入れなくてはなりません。そこで今回、この捜査本部で一層の士気を高めるべく、その道に非常に詳しい専門家をお連れいたしました。ご紹介いたします。マルイデタメオさんです」
マルイデタメオと呼ばれた例の変人が、口からパイプを離し、軽く頭を下げた。
「マルイデさんは、今まで数々の難事件を解決してきた経験と実績があります」と、今度は河北署長が説明を始めた。「彼のお知恵を拝借すれば、必ず今回の事件も解決できると信じてますので、みなさんもどうか、マルイデさんを温かく迎えてください」
「それではマルイデさん、ここにおられる方々にご挨拶をお願いいたします」
と上野が言うと、このシャーロック・ホームズ気取りの変人は、しばらく無言で少々困惑したような表情をしながら口を開いた。
「ああ……私は、こういう場所で型通りの社交辞令をするのが大の苦手でしてな……とにかく私は自他ともに認める名探偵であります。色々とご相談したいことがあれば、今名刺を差し上げますんで、ぜひともよろしく」
と言って、コートのポケットに手を突っ込んだかと思うと、会議室内にいる刑事たちに名刺を配り始めた。刑事たちの人数が多いので、まるでトランプの札を放り投げるように、急ぎ足で。
名刺には「丸出為夫」と印刷されている。肩書は「名探偵」……
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