美味しいご飯は、二人を混ぜ合わせる

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 長い付き合いになってくると、好みが似てくる。同じものを食ってると考えることまで似てくんのかな。 「考え事まで似てくんのかなってか?」  料理が綺麗に並べられた食卓。使い慣れた箸、俺好みのごはんの硬さ。いや、元はもっと柔らかいのが好きだったはずなんだけど。  ご飯を眺めながら首を捻っていた俺の頭の中を覗き込んだかのように呟いたのが、陽だ。 「なんで、わかるんだよ」 「これだけ一緒に居ればな」  出会ってから付き合い出すまで約一年。そこから一緒に暮らすようになるまで約一年。暮らしだしてから今でもう三年。計五年共に過ごしていることになる。 「なぁ、どう思う?」 「とりあえず食べるぞ。いただきます」  ピシッと背筋を伸ばして両手を合わせる姿をもう少なくとも千回くらいは見た。それなのに、見るたびに美しいと惚れ惚れしてしまうのはなぜだろう。 「いただきます」  一拍遅れて両手を合わせる。オレンジ色のサーモンのなめろう。茶色の混じったもち麦ご飯と、真っ白なとろろ。分厚い厚揚げの味噌汁。一寸の狂いもない俺好みのご飯に、ため息が漏れ出る。
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