美味しいご飯は、二人を混ぜ合わせる

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* 「ごちそうさまでした」  両手を合わせて挨拶をしてから、空になった器を運ぶ。二人で並んで洗い物をしながら、先程の話へと戻す。 「俺さ、仕事中からずっとサーモン食べたかったわけ」 「あーそれで、夜飯がサーモンのなめろうだったからね」 「そういうこと」 「俺も食べたかったんだよね、サーモン」  事もなげに呟く陽に愛しさが募った。打合せしたわけでもなく食べたいものが合致する。これは、もう運命としか言いようが…… 「まぁ、ルーチン的になってんじゃね?」  運命的なものを感じて考え込んでいた俺に告げられた言葉は意外なもので。ルーチン……ルーチン……脳内で意味を検索する。決まりごとみたいな意味だった気がする。 「ルーチン?」 「そ、毎月これくらいの時期にサーモン食ってるから」  言われてから記憶を掘り起こす。さすがに、一ヶ月前のご飯を覚えている記憶力は持ち合わせていなかった。 「まぁ覚えてないだろうけど」 「そういうことかぁ」  運命とか、俺と陽が混ざっていく感覚とか、柄になくスピリチュアルな方にいってた。蓋を開けてみれば、染み付いた習慣でしかなかったわけだ。 「それでも、なんか嬉しいんだよな」 「俺の飯が、匠の身体を作ってるって事だよ」  先ほどまで俺が考えてたまんまのことを言われてしまってから、思う。やっぱり、同じものを食って一緒に過ごしていくうちに考え方まで似てきてるのかもしれない。 <了>
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