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こうやって俺達だけで飲むのは久しぶりで、何だか新人の頃に戻ったみたいだ。
でも話す内容は変わった。
前は仕事のつらさと上司の愚痴だったのが、仕事のやり方とやりがい、部下とのコミュニケーションとか、前向きな話が多くなっていた。
みんなが万琴さんが作った料理に舌鼓を打つのを見て、やっぱり自分一人で食べたかったという思いに駆られる。
また今度作ってもらおう…材料費は全部俺持ちで。
「純和風って感じの家よね。かなり部屋も広いし、秋村くん、いい物件見つけたじゃない」
「見つけたっていうか…募集があったから」
「つまみも美味い♪ルームシェアの人って、秋村の彼女?」
「違うわよ!ルームシェアの人は男の人なんだから」
彼女じゃないけど、恋人同士だったりするんだよね…。
万琴さんのことは絶対内緒だ。
あれこれ詮索されたくないし、本人も詮索されるのは嫌いだから。
曖昧に笑って誤魔化しながらの飲み会は苦痛だ。
だけど、俺が矢面に立てば、それだけ万琴さんから注意が逸れる。
本当は誰の目にも触れさせたくないくらい、俺は万琴さんを貪欲に求めている。
万琴さんに関しては際限なく欲しくなるから仕方ない。
あの妖艶な雰囲気に参らない人はいないと思う。
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