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『智晴さん。
レンタルって、代金と引き換えに物品を“どこか”から、借りるってことじゃないですか。
返してくれないと、貸した側である“どこか”が困っちゃうんですよね。』
クロノスの男の声が低くなる。
私は彼が何を言いたいのか分からない。
ああ、まずい、なんだか酷い眠気が襲ってきた。
本能的に分かる、これは“眠り”じゃない、これは私の魂が私の体から剥がれ落ちそうになっているんだ…!!
眠気と抗う私の耳元で、クロノスの男は囁き始めた。
『さて、問題です。
貴方の視力、どこからレンタルしたか分かりますか?』
そんなこと知るか、いやだ、死にたくない、死にたくないのに、体が、意識が言うことをきかない……
『じゃあ、教えてあげましょう。
“10歳の貴方”から視力を借りたんですよ。
もともと貴方は、神の定めで60歳頃には緑内障によって失明することになってはいました。私が現れたのは、最初に設定されていた人生でそういう風にボーナスタイムが用意されていたからです。
でも、貴方が貴方の過去を歪めちゃったから、10歳で失明しちゃったんですよ〜。
ちゃんと今の貴方が返せば、10歳の貴方は事故で視力を失う事も無かったのに。
愚かですねぇ。』
私の失明は、
私のせいだったと………!?
…………ピーーーーーーーーー…
「…15時、8分。
ご臨終です。」
終
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