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プロローグ
あの日、旧校舎の裏手に行ったのは、ただの気まぐれだ。
あの日は春の陽が麗かで、ちょうど1人になりたい気分で、
旧校舎の裏手には南の陽がさすことを俺が知っていただけ。
ただそれだけ。ただの偶然だ。頭では理解できる。
なのに、俺の中の何かがやっぱり違うと言っている。
あの日、あの場所で、あの人と出会えたことが、運命じゃなかったはずがない。
澄んだ白い肌も、柔らかそうな黄土色の猫っ毛も、震えるまつ毛も。
静かに寝息をたてる彼は、
テレビで観る芸術的な教会のような、
中世の装飾で彩られたお城のような、
そんな荘厳さを纏っていて。
祝福の光に包まれたようなあの人の姿が、
今でも俺の脳裏に鮮烈に焼きついている。
それこそ、カメラなんていらないくらいに。
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