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第1話
「はい、みなさんさようなら」
担任の教師のハゲ頭が上がりきり、お辞儀が終わるのも待てずにダッシュする。鞄棚からリュックを取り出し、机の中身を突っ込んで教室の喧騒から走り出た。
廊下で女子とたむろっていた高良が、俺に声をかけてきた。
「あ、葉樹く〜ん。今日空いて」
「空いてない」
「だよね〜知ってる☆」
ケラケラと笑う高良は、一昨年から同じクラスのやつだ。
幼い見た目だった俺を、「葉樹がいると女の子たちが『可愛い〜♡』つって寄ってくるんだよね〜」と言って女子寄せに遊びに誘ってきていた。過去形なのは、俺がもう身長173cmのイケメンに成長したから。
俺が高良と女子の遊びに参加すれば、逆に高良のお株を奪ってしまうため、意味がない。ざまぁみろ。
靴箱で靴を履き替え、旧校舎へと向かう。
旧校舎の引き戸を開けると、今使用されている新校舎とは違う埃っぽい木の香りが漂う。
ギシギシきしむ階段を踏みしめて上がり、旧2年3組の引き戸を引くと、そこには天使が机に腰掛けていた。
「あ、葉樹くん!今日も早かったね」
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