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シートを引いた遥先輩が、宝石のような笑顔で俺に手招きする。
「葉樹くん、ほら、早く早く!」
う~ん、車のCMのワンシーンみたいだ。現実とは思えない美しさ。俺は不遜にも、その天使の隣によっこらしょと腰掛ける。
どこにでもシートを持っていくのは、この人の癖だ。なんでも、その場所を好きになるには、そこに寝っ転がってみるのが1番らしい。そして、いい写真を撮るには、何か大きな思いが必要だと。
「大きな思いっていっても、色んなのがあるわけだよ。どうせなら、その大きな思い、『大好き!』の方が楽しくない?」
そんなふうに言って笑っていた。だから、彼は写真部の活動の時にはシートを持っていく。
シートの上に座った遥先輩が、こてんと寝転んだ。煌めく茶髪がふわりと広がる。そうして、隣に座った俺をにこにこと見つめる。
「…はいはい」
「えへへ」
遥先輩の隣に体を横たえる。地面から香る緑。緩やかに体を撫ぜる風を吸い込むように、深呼吸。隣の遥先輩も、同じようにしているのがわかった。
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