FIRE男と自己破産女

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　経済的自由を手に入れるための手段は株や不動産、あるいは副業などが中心だが、このFIREの基本的な戦略はレバレッジを利かせた成長株をぶち当てて大儲けしようというようなものではなく、日々の生活を見つめ直し、徹底的に節約を行ったうえで、コツコツとインデックスファンドや高配当株、不動産などを取得していくものであった。

　その上でブログやプログラミングなどの副収入も資産を育てるための入金力に充てて金の卵を産むニワトリを育て続けようという再現性の高いもので、自分の性格ともよくあった。

　中学では陸上部で長距離走をしていただけあって、瞬発的なものよりコツコツと積み上げたり、しっかり予定を立てて計画通りに積み上げることの方が好きだ。

　これと言ってお金のかかる趣味もないし、社交性の高いほうでもない。お酒も飲めないわけではないが強くもないので、半分趣味のように投資やブログの勉強をし続けて、ついに半年前に不動産の家賃収入と株の配当金、ブログからの収益などの合計が生活費を上回ったのをきっかけに十四年ほど勤めた会社を辞めた。

　退職してもっとダラっとした生活になるかと思ったが、もともとの性格ゆえか今のところ意外と規則正しい生活を送れている。

　朝六時半には起床して朝食を食べながら新聞を読む。だいたい八時半ごろまでに、取引を終えた米国株市場の分析とその日の日本株市場の分析を行う。大きな動きがあるときは買い増しや、売りさばくこともあるが基本はインカムゲイン狙いなので、メンテナンスといってもほとんどすることがない。分析は儲けるためというより単純に世界で今何が起きているのかを知るという側面の方が強い。

　株の分析を終えた後はランニングに出かける。健康な体は何よりの資本だ。高校からは部活に入らなかったが、長距離をぼんやりと走るのは頭の中もリフレッシュできていい。自宅から十分ほど走れば深北緑地という治水のための大きな公園がある。ここなら緑も感じられて穏やかな時間が過ぎていく。

　一時、ジムの体験に行ってみたが、たくさんの人がいる中で機械を使ったトレーニングは性に合わなかったし、やたらと話しかけてきてマウントを取るムキムキおじさん達も面倒だった。そして、なによりコスパの悪さから運動は日々のランニングと風呂上がりのストレッチと自重による筋トレ、移動の際の自転車で行うことに決めた。

　自動車は持っていない。たいていの移動は自転車で事足りるし、ゆっくり歩いても十五分歩けば最寄りの四条畷駅に到着する。学研都市線は東西線を経由して一本で大阪市内から神戸まで、逆は奈良まで乗り換えなしでつながっている。

　快速も停まるので京橋までは十三分でいけるのに、大阪市内と比べて圧倒的に地価が安い。駅前には商店街やスーパー、自転車で少し行けばイオンだってあるから日常の買い物にも困らない。実家の長尾にも電車一本ですぐに帰れる。まさに今の住んでいる場所は自分にとってこれ以上ない条件だった。