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 話を日々のルーティンに戻そう。  ランニングから帰ってきたら、部屋の掃除や洗濯物をたたむなどの家事を行う。洗濯はちゃんと風呂水を使って回し、夜のうちに浴室乾燥を使って干してしまう。ある程度、家事が済んだら昼食を取り、午後は三時ごろまではゆっくりとYouTubeを見たり、録画しておいたドラマなどを見ることが多い。時々、小一時間昼寝をしてしまうときもある。  三時を過ぎたころからは自転車で図書館に行くか、イオンに行くかが日課だ。図書館の場合は新刊の棚からぐるっと回ってその日の気分でめぼしい本を見つける。よっぽどの場合は借りることもあるが基本は図書館で読み切ってしまうのが自分のスタイルだ。その日の気分にもよるがだいたい実用書と小説が半々ぐらいの割合になっている。  入り口から入って右奥の角の席が定位置になっている。ここからなら図書館の全体がほぼ見渡せる。仕事を退職してから人との関わりが極端に減ったので、誰かと同じ場所にいる感覚が安心するのかもしれない。基本的には人づきあいは苦手で煩わしくさえあるのに、面倒くさい性格だと我ながら思う。  イオンに行く場合も図書館と大きく行動は変わらない。特にファッションなどには興味もこだわりもないので、モール内に設置されている本屋に直行する。そこではまだ図書館に入っていないような新刊、それも実用書中心に本を探す。小説の場合、人気作ならたいてい図書館にも入るが実用書の場合は図書館に置かれないものも多い。  最近の本屋は椅子と机も設置されていてゆっくりと本が読めるが、長い時間読んでいるのはやっぱり悪いことをしているような気がするので、同じ本があるなら図書館の方が好きだ。別に気にせず読んでいればいいとも思うが、その辺はいくつになっても小心者なのは変わらない。  夕方を過ぎればイオンや近くのスーパーで総菜などを買って家に帰る。もちろん値引きのシールが貼られたものを選ぶのも忘れてはいない。夕飯時を少し過ぎた時間に寄るのがポイントだ。FIRE生活には日々の生活コスト下げることが大切だ。塵も積もれば山となる。  部屋に戻って夕食を取ってからは、先に風呂などを済ませてしまう。何となくすべて終わらせて落ち着いてから出ないとパソコンに向かえない。一通りメールなどをチェックした後は、サイトの方に記事を書いていく。  数年前から投資の情報やFIRE生活についてまとめたブログを運営している。もともとは自分の投資の記録を書き起こす目的から始めたブログだったが、いつの間にかそれなりの人気も出て、今ではそれなりの収益も出している。  ブログの訪問者からはYouTubeでの動画配信なども勧められたが、たとえアニメーションなどを使うにしても話下手の自分がうまくできると思わない。資産形成についての講演会の依頼などもサイトを通じてくることがあるが基本はすべて断らせてもらっている。  唯一、他に受ける仕事といえばマネー雑誌にスポット記事を書くことぐらいだ。文章を書くことは嫌いでないし、これならサイトのハンドルネームで実名や自分自身が人前に立つ必要はない。  サイトの記事を書き終えるとそのままネットサーフィンを続けて、米国株の始まる十一時半にその始値を確認してから寝る。これが通常の一日の過ごし方だった。もちろんいろんな急な予定が入ることもあるが、できる限り日々波風を立てず穏やかに過ごすのが自分の望みだ。  それがあの同窓会の日から大きく変わってしまった。
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