*《前半著者》蒼乃穂雪さん*

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 こじんまりとした劇場の客席に腰を下ろした少女が、尊大な態度で演劇を眺めていた。  良家のお嬢様である彼女の名はシエル・エルセン。フランシェリスのエネルギー関連事業をリードする三つの大企業、その一つに数えられる〈ショトレ〉の特別技師だ。 「小国エネルリア。エネルギー開発に躍起な有象無象の国家の一つと聞き及んでいたけれど、エンタメにおいてはやっぱり見所があった」  シエルは劇の終幕を思い返して、涙ぐんでいた。そして、この演目を見逃さずにチケット予約した私はなんて冴えているんだ、と自画自賛した。エネルリアへの入国にあたって観光業を徹底的にリサーチした賜物と言えるだろう。
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