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「ただ、ね?」
大通りの雑踏に紛れていたシエルが不意に歩みを止めた。混雑した道のド真ん中で立ち止まる少女に、観客たちは怪訝な表情を浮かべたが、再び劇の余韻に呑まれてどこ吹く風だ。
正しい価値が評価されていない宝石のように、少女は道端の石ころになっていた。
「金のなる木になってあげるつもりは毛頭ないわ。祖国フランシェリスの技術はフランシェリスが為にある」
少女が小声で呟いた思惑にエネルリアを慮る気持ちはない。
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