9.幸せのカタチ、一緒ならきっと

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「あら、相談してないの?」  お母さんが意外そうに聞く。  部屋がシンと静まり返り、私と匡に注目が集まる。 「急いでないから――」 「――実は!」  私の言葉を遮ると、匡が少し大きな声を出し、箸を置く。 「家を建てようかと思ってます」  聞いてませんけど!? 「まだ、千恵にも言ってないんですけど」  ハハハと笑って見せるが、笑い事ではない。 「転校しなくてもいい場所に、土地が……あるので」 「え? それってめぼしい土地が売りに出てるってこと?」 「いや、俺の土地?」 「はぁ!?」  これから結婚しようって時に、相談もなく土地を買ったってこと!?  いくら財産があっても、これはない。 「いや! 買ったんじゃない。名義変更しただけだ」 「名義変更!?」 「そう。実家の土地」 「……実家? そういえば、匡の実家ってどこだっけ?」  匡が肩を落とす。 「千恵。旦那の実家の場所も知らないの?」  なぜか、お母さんがため息をつく。 「え? だって! 中学の時はそんなに仲良くなかったし」 「それにしたって――」 「――実家は五条なんですけど、俺が大学の頃に両親はマンション暮らしを始めてるんです。なんで、人に貸してたんですけど、その人が少し前に引っ越したんで、結婚祝いに貰ったんです」 「え! ご両親に結婚のこと話したの!?」
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