1.夢に見る、会いたくなかった男

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「それはそれで、再婚してる奴もいるだろうし、人数は変わんないかもな」 「折角集まったんだし、自己紹介の代わりに離婚理由でも言っとく?」 「マジ、やめて。忘れたいんだから」 「そうだよ。思い出すと暴れたくなるから」 「槇ちゃん、どんな別れ方したの……」 「あ、てか、みんな名字変わってない?」 「私、庄田じゃないよ。木下(きのした)を経て、現在は茶畑(ちゃばた)」  真奈美が言った。  この場では、唯一の既婚者だ。  というか、バツイチは『未婚』という表現に当てはまるのだろうか。  二択なら未婚になるが、『未だ結婚していない』という意味合いでは違う。  そんなどうでもいいことを思った。 「私は今、木下」と言ったのは香苗。  彼女の旧姓は鈴本(すずもと)だ。 「子供の名字変えるの可哀想で、元旦那の名字のままなんだ」 「木下かぁ……。秒で忘れんな」と、近藤が頷く。 「もう鈴本もピンとこないから、名前でいいよ」 「わかった、香苗」 「きゃー! 元旦那以外の男に名前呼ばれるのなんて、何年振りだろ。しんせーん」  既に酔っているかのようなテンションで、香苗は両手を頬に当てて、わざとらしく照れた仕草をして見せる。 「わかる! 私なんて元旦那にも名前呼ばれたのいつか思い出せないわ。『お前』呼びされてたから」 「槇ちゃん……」  全員分のビールと、ジンギスカンの唐揚げ、マルゲリータピッツァが運ばれてきて、テーブルが一杯になった。  改めて乾杯をする。
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