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「それはそれで、再婚してる奴もいるだろうし、人数は変わんないかもな」
「折角集まったんだし、自己紹介の代わりに離婚理由でも言っとく?」
「マジ、やめて。忘れたいんだから」
「そうだよ。思い出すと暴れたくなるから」
「槇ちゃん、どんな別れ方したの……」
「あ、てか、みんな名字変わってない?」
「私、庄田じゃないよ。木下を経て、現在は茶畑」
真奈美が言った。
この場では、唯一の既婚者だ。
というか、バツイチは『未婚』という表現に当てはまるのだろうか。
二択なら未婚になるが、『未だ結婚していない』という意味合いでは違う。
そんなどうでもいいことを思った。
「私は今、木下」と言ったのは香苗。
彼女の旧姓は鈴本だ。
「子供の名字変えるの可哀想で、元旦那の名字のままなんだ」
「木下かぁ……。秒で忘れんな」と、近藤が頷く。
「もう鈴本もピンとこないから、名前でいいよ」
「わかった、香苗」
「きゃー! 元旦那以外の男に名前呼ばれるのなんて、何年振りだろ。しんせーん」
既に酔っているかのようなテンションで、香苗は両手を頬に当てて、わざとらしく照れた仕草をして見せる。
「わかる! 私なんて元旦那にも名前呼ばれたのいつか思い出せないわ。『お前』呼びされてたから」
「槇ちゃん……」
全員分のビールと、ジンギスカンの唐揚げ、マルゲリータピッツァが運ばれてきて、テーブルが一杯になった。
改めて乾杯をする。
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